高配当株を損切りしてインデックス投資に乗り換えた理由

2019年10月22日

日本の高配当株で圧倒的な人気を誇るJTこと日本たばこ産業(2914)は、記事執筆時点(20/07/22)で配当利回り8%まで上昇しています。

銀行預金なら100万円預けていても10円しか金利が付きませんが、JT株に100万円投資すれば8万円の配当金をもらえる計算です。配当金は完全な不労所得なので、その響きに惹かれてJTを始めとする高配当株に投資する人々は後を絶ちません。何を隠そう私もその一人でした。

しかしよくよく考えてみると、20~30代で給与所得者かつ長期投資であれば、高配当株投資よりもインデックス投資のほうが優れているし、高配当株投資は逆に損していることに気づきました

そこで持っていたJT株をすべて売却(損切り)し、得た現金はすべてインデックスファンドに一括投資しました。今回はその理由を解説していきます。

高配当でもトータルリターンはマイナス

もらった配当金以上に株価が下落し、トータルで見ると±0円どころかマイナスになっていたからです

上のグラフは2015年7月~2020年7月のJT株の価格推移を表しています。私が初めてJT株を買ったのは2019年の11月でした。理由は下落を続けていたJT株が2019年9月を境に反発を始めたからです。

当初の計画では、12月末の権利確定日までに100株購入し、権利落ちで値下がりしたタイミングでさらに買い増しをして、高配当と株価上昇による含み益を狙うはずでした。

しかしその計画は脆くも崩れ去ります

権利落ちすると理論上は配当金と同じくらい株価が下がり、次の権利確定日に向けてじわじわと上がっていくものですが、JTは下げ止まりません。2019年9月からの株価上昇が再び起こるのではないかという期待は完全に裏切られます。

とは言えこうした高配当株は、株価が下落すればよりたくさん株を買えるので、受け取れる配当金を増やすことができます。高配当株投資家にとって株価下落は好都合です。私も株価下落の最中に何回か買い増しを行い、株数を増やしました。

しかし株価下落は好都合とは言っても、それは「将来的に株価が上がるのであれば」という但し書きが付きます。下の図のように、2020年初頭のコロナショックでは高配当株はもちろん、S&P500のインデックスファンドを含めたほぼすべてのリスク資産が暴落しました。

その後の2020年7月現在、S&P500などの時価総額加重平均インデックスファンドの基準価格はコロナショック以前の水準に戻りつつありますが、高配当のJT株は下落を続けてコロナショックの底値に向かう勢いです。

私は高配当株だけでなく、2019年7月からつみたてNISAでS&P500や全世界に投資するインデックスファンドも購入しています。2020年7月時点での含み損益を計算してみると、

・JT株: -15.2%
・インデックスファンド: +6.6%

でした。

JT株で7~8%の高配当利回りを得ても、含み損が-15%もあれば配当のプラス分が吹き飛びます。S&P500や全世界インデックスファンドなら、ほったらかしていても+6%なのに、高配当個別株で減配リスクや含み損でストレスを抱えて、さらにトータルリターンがマイナスになっているなら投資をしている意味がありません。

冷静になった私はその日のうちにJT株すべてを成行で売却したのでした。

なおJT以外にも高配当株はいくつも存在し、その中には株価の値上がり益(キャピタルゲイン)も合わせて得られてトータルでプラスになるような銘柄も存在することは事実です。だとしても高配当株よりもインデックスファンドを選ぶ理由を以下で述べます。

配当金に課税されるので投資効率が落ちる

配当金が出るとその時点で課税されてしまいますが、無配のインデックスファンドなら売却時まで課税されません

高配当株投資では、受け取った配当金でさらに高配当株を買う(再投資)することにより、複利の力を生かして株数と配当金額を増やしていくのがよい、とされています。

しかし、株の配当金は受け取った瞬間に税金20.315%が引かれてしまいます。再投資するたびに20%もの税金が強制的に取られてしまうのは非常に効率が悪く、複利の力が弱まります

一方、無配のインデックスファンドならば、得られた配当金はファンド内で再投資されるので、逐一課税されることはありません。

現役サラリーマンなら配当金のキャッシュフローは必要ない

「高配当株を買って配当金という不労所得を得たい」
「高配当株を買い集めていけば配当金がどんどん膨れ上がって、いつかはセミリタイアできるかも」

高配当株を買う理由はこんなところだと思います。私もそうでした。

しかし毎月数十万円という給与のキャッシュフローを得られるサラリーマンであれば、現役時代から配当金でキャッシュフローを増やす必要はありません。配当金を再投資するならなおさらです。

配当金生活を目指すならば、とにかく投資元本(種銭)を増やす必要があります。仮に月20万円の配当金を得ようと思ったら、配当利回り3%として6,000万円の種銭が必要です。

この種銭を貯めるために最初から高配当株を買ってしまうと、ただでさえ値上がり益を得づらいことに加えて、再投資する配当金も税金で20%引かれてしまうので、トータルで見たときに種銭形成のスピードがかなり遅くなります。

「配当金をもらうことそのものが嬉しい」
「配当金が積み上がっていくのを見るのは気分がいい」
「配当金を再投資して株数を増やしていくのは達成感がある」

確かにその気持ちはよく分かります。

しかしそれは、高配当株という銀行口座から手数料(税金)を払って受け取った現金(配当金)をそのまま再入金するのと同じことです。つまり税金の分だけ無駄に損失を被っています。

現役のサラリーマンで給与という安定的なキャシュフローがあり、給与だけでも十分生活が可能で、受け取った配当金を全額再投資する生活を送っているならば、ファンド内で非課税かつ自動で再投資されるインデックスファンドのほうが、節税の意味でも、手間や時間が掛からないという意味でもメリットが大きいです。

減配リスクと株価下落に怯え、精神と時間が削られる

これ以上成長する(株価が上がる)ことが期待されておらず、結果的に配当利回りが高くなっているのが高配当株です。

配当金は企業が得た利益の一部を株主に還元しているに過ぎないので、会社の成長が見込めず減益が続けば、いつか配当金を支払いきれず、減配される日が来ることになります。また減配が決まった瞬間に、高配当株だからという理由で何とか買い支えられていた株価は暴落します

有名高配当株のロイヤル・ダッチ・シェルが、2020年のコロナショックを受けて80年ぶりに減配したのは記憶に新しいところです。

高配当株は減配と株価下落と隣合わせなので、日頃から投資先の業界の動向や会社の決算、株価がどうしても気になりますし、気にする必要があります。

ETFならまだしも、高配当個別株を複数保有している場合は、一定の自分の時間と精神のリソースを取られてしまいます。もし自分の保有株が減配されようものなら、そのショックや後悔の大きさは計り知れません。

一方、全米や全世界に投資するインデックスファンドなら、心配は無用です

全世界の時価総額加重平均に基づくインデックスファンドに投資するという行為は、全世界の株式市場そのものを買うことと同じです。例え2020年のコロナショックのような暴落があっても、「長期的に見ればコロナはいつか収束するし、世界全体の経済も引き続き成長していくはず」と考え、安心して持ち続けられます。

高配当を出す会社が30年後に存続しているかどうかは不透明ですが、世界経済全体が30年後に今より悪くなることはおそらくないでしょう。少なくとも現時点で高配当を出す会社に今後30年間資産を託すよりは、世界経済成長に資産を託したほうが、良い結果を得られるだろうと私は考えています。

インデックスファンドや時価総額加重平均などについては
20代でつみたてNISAを始めれば老後2000万問題は解決する
でも詳しく解説をしています。

まとめ

今回は高配当株であったJTこと日本たばこ産業(2914)を損切りし、インデックスファンドに乗り換えた理由について書きました。

損切り時点での含み損は約20万円、配当込みだと約15万円ほどの損失でしたが、いい勉強代だと思って今後に活かしたいと考えています。

(2021/02/09追記)
154円→130円に減配となりました。手放しておいて本当に良かったです。

私と同じく、高配当株を買ったけどなんだか腑に落ちない、損切りしようか悩んでいる方の参考になれば幸いです。

それではまた!