学生納付特例分の年金を追納しない理由

2019年10月25日

日本国内に居住する人は20歳になると自動的に国民年金に加入することになり、保険料を納付することになっています。

しかしこの保険料は令和2年度現在で月に16,540円と、決して安いものではありません。特にアルバイトくらいしか収入がない学生にとっては大変な負担です。
(参考: https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150313-02.html)

そこで在学中の学生に限って年金の支払いを猶予してくれる制度が設けられています。これが学生納付特例と呼ばれるものです。学生納付特例は支払いの免除ではなく「猶予」なので、猶予された分は後から支払う、つまり「追納」をすることになります。

例えば4年制大学にストレートで入って卒業した場合は、約2年分の保険料を払うことになるので、ざっくり計算しても40万円程度を追納することになります。大学院修士まで行った場合は4年分なので80万円です。

いくら社会人とはいえ、これらの保険料を払うのはかなりの負担になります。しかし学生納付特例によって猶予された年金の追納は任意なので、追納しないという選択もできます。

おそらくこの記事を読んでいただいている方は
学生納付特例で支払わなかった年金は追納すべきか
悩んでいる方だと思います。

私は「追納しない」ことにしたのでその理由を解説していきます。

追納しないとどうなるか

令和2年現在、国民年金は年間で781,692円受給できることになっていますが、追納しなかった場合は猶予1ヶ月分につき約1,630円ずつ受給額が減ります

例えば、

  • 2年(24ヶ月)分追納しなかった場合は年間で39,120円
  • 4年(48ヶ月)分追納しなかった場合は年間で78,240円

だけ受給額が減ることになります。

国民年金は20歳から60歳までの40年(480ヶ月)分の保険料を全て納めれば満額受給されますが、学生納付特例などで猶予された分を追納しないと、その分だけ減額されて支給されることになっています。

480ヶ月納めれば年間781,692円が受給できるということは、1ヶ月あたりに換算すると、
781,692円÷480ヶ月≒1,630円
となるので、猶予1ヶ月分ごとに約1,630円ずつ受給額が減るという計算になります。

何年生きれば元が取れるのか

75歳以上まで生きれば追納した分の元が取れます

令和2年現在、国民年金は65歳から死ぬまでずっと支給されることになっているので、

  • 2年(24ヶ月)分の保険料396,940円を追納すれば、受給額を年間39,120円増やせる
  • 4年(48ヶ月)分の保険料793,920円を追納すれば、受給額を年間78,240円増やせる

ことになります。

したがって元を取るのに必要な年数は、

  • 2年分追納の場合、396,940÷39,120≒10.15年
  • 4年分追納の場合、793,920÷78,240≒10.15年

と計算できるので、75歳以上まで生きれば元を取れることになります。

年金の追納は年利2%の資産運用と同等

例えば65歳から85歳までの20年間受給するとした場合、

  • 2年分396,940円を追納する場合、39,120円×20年=782,400円
  • 4年分793,920円を追納する場合、78,240円×20年=1,564,800円

だけ受給額が増えることになります。

仮に30歳時点で全額を一括で追納した場合、

  • 396,940円が35年後に782,400円に増える
  • 793,920円が35年後に1,564,800円に増える

と考えることができます。

これは追納額を年利2%の35年定期預金で運用し、65歳から85歳まで一定額ずつ切り崩すのとほぼ同じ意味を持ちます

追納せず自分で運用したほうが高リターン

出典: AAII Journal

年金を追納するよりは、全世界株式や米国株に投資する投資信託を買って自分で運用したほうが高リターンを期待できます。上の図によれば、米国株(Stocks)は過去200年にわたって、年間平均6.7%の非常に高いリターンを叩き出しています。

仮に年金追納分を米国株に投資して利回り6.7%で運用できたとすると、

  • 2年分396,940円が35年後に3,841,312円に増える
  • 4年分793,920円が35年後に7,683,010円に増える

ことになります。

投資信託 (6.7%)年金追納 (2%)
2年分 (396,940円) 3,841,312円 782,400円
4年分 (793,920円) 7,683,010円1,564,800円

年金として追納するより約5倍も資産が増えますね

株式投資は元本が保証されないので年金追納に比べてリスクはあります。しかし35年もの長期運用であればマイナスになることは考えにくく、それよりも年金制度が改悪される可能性のほうが高いと考えられます。

以上の理由から、私は年金を追納せず自分で運用することに決めました。

30歳で追納せず60歳から任意加入という選択肢もある

自分で運用するのは不安だから国に任せたいという方は、60歳から国民年金に任意加入するという手があります。

国民年金は20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)加入し、65歳から年金の給付が始まります。満額支払った方は60歳で加入期間は終わってしまいますが、未納分がある方に限って65歳まで任意加入が可能です。

例えば2年分の追納がある場合は、60歳~62歳までの2年間だけ国民年金に任意加入して保険料を支払えば、65歳から満額を受給できることになります。

30歳時点での追納は金銭的にかなりの痛手ですが、60歳になってから納めるのであれば、退職金や貯金などを使って、それほど負担になることなく支払うことができると思います

もし自分で運用してうまく行かなかったとしても、任意加入というリカバリーがあるので安心ですね。

まとめ

「学生納付特例で猶予した年金は追納すべきか」について解説してきました。結論をまとめておきます。

  • 年利2%以上で資産運用できるなら追納せず自分で運用したほうがメリットが大きい
  • そうでなくても60歳からの任意加入で未納分を納めればOK

とはいえ30歳時点での追納は、

  • 年金の追納額は全額が社会保険料控除となり税負担が減る
  • 所得が減るので認可保育園を利用している場合は利用料が安くなる場合がある

などのメリットもあるので、最終的には自分で計算して追納すべきかどうかを判断するのが良いでしょう。

ちなみに自分で資産運用する場合は、税制優遇のあるつみたてNISAから始めるのがよいです。
詳しくは
20代でつみたてNISAを始めれば老後2000万問題は解決する
をお読みください。